有機フッ素化合物とは、炭素とフッ素の結合を持つ有機化合物で、1万種類以上の物質があるとされ、その有機フッ素化合物のうち、パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances)」と呼んでいます。
PFASの中でも、PFOSとPFOAは、耐油性、耐水性、耐熱性などの特性により、撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーティング剤として、衣類、食品包装、電子機器、消火器、調理用具などに利用されてきましたが、近年では環境と健康に関していくつかの問題があることがわかり、その影響が懸念されています。
※水道水の水質基準項目にある「フッ素及びその化合物※1」は、フッ素とナトリウムなどの無機物が結合した物質であり、フッ素と炭素(有機物)が結合した有機フッ素化合物とは別のものです。
※1フッ素及びその化合物
水道水は我々の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできないものであるため、水道法第4条の規定に基づき、水質基準項目と基準値(51項目)が定められていて、その51項目の中に、「フッ素及びその化合物」という検査項目があります。
PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(パーフルオロオクタン酸)
有機フッ素化合物のうち、PFOS(Perfluorooctane Sulfonic Acid)やPFOA(Perfluorooctanoic Acid)は、その難分解性と生体蓄積性により環境や生態系への影響が懸念されています。
環境への影響:PFASは環境中に放出されると、分解が難しく生分解性が低いため、土壌や地下水、大気中に長期間にわたって留まり蓄積するため、環境が汚染され生態系に影響を及ぼす可能性があります。
生態系への影響:動物実験や疫学研究によると、一部のPFASについては生殖・免疫・代謝・内分泌系への影響や、がんや肝臓障害などのリスクとも関連付けられています。
これらの健康上の懸念から、PFASの使用と環境中の存在に関する認識が高まっていて、一部の国や地域では特定のPFASの使用を制限したり、水中の濃度基準を設定したりするなど、規制や措置が導入されています。また、代替品の研究や適切な廃棄物処理の推進なども行われています。
PFOSについて、国内では化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)において、2010年4月以降は特定の用途を除き製造・輸入・使用等が禁止されています。PFOAについては、化審法に基づく所要の措置について検討が行われています。
環境省によるとPFOS及びPFOAは、世界保健機関(WHO)において、未だ飲料水の水質ガイドライン値が設定されていない一方、各国・各機関においては、目標値等の設定に関する動きがあり、我が国では、厚生労働省が水道水の水質管理を適切に行うという観点から検討を進め、PFOS及びPFOAの合算値で「50ng/L以下」と暫定で目標値が設定されました。(令和2年5月28日通知)
内閣府 食品安全委員会 ファクトシート
パーフルオロ化合物について、国内において規制の動きが進んでいること、また、海外においては規制及びリスク評価の動きが進んでおり、内閣府 食品安全委員会はファクトシート※2を公表しています(2019年9月更新)。
※2ファクトシート
ファクトシートとは、ハザードごとに、国際機関や国内外のリスク評価機関が公表した評価結果、最新の研究成果及びリスク管理措置等の情報を収集・整理した「科学的知見に基づく概要書」のこと。